【世界遺産平泉の最強パワースポット】毛越寺 浄土庭園で平安時代へタイムスリップ!~延年の舞、曲水の宴、摩多羅神~
完全に残る自然美の浄土庭園
毛越寺の本堂脇に立つと、南大門跡から見渡せるのは、思わず息をのむ美しい庭園。大泉が池を中心に広がる景色の向こうには、伊達藩が目印として植えたといわれる杉や松が茂り、そのはるか先にはなだらかな「塔山」の稜線が広がっています。
この庭園は、平安時代の浄土式庭園の作庭様式を色濃く残したものとして、全国でも貴重な存在。今も訪れる人々を魅了し続けるこの庭園は、国の特別史跡、特別名勝に指定されています。庭を歩きながら、当時の人々がこの風景に思いを馳せた気持ちを想像すると、平安時代の雅やかな時代にタイムスリップしたような気分になります。
【大泉が池と中島】
庭園の中心には、四季の美しさを映す大泉が池があります。池は東西約百八十メートル、南北約九十メートルあり、八百年以上にわたりほぼ完璧な状態で保存されています。
池のほぼ中心部に見えるのが、中島です。池の周辺や中島にはすべて玉石が敷かれています。
【築山】
金堂跡を右手に見ながら池辺に沿って進み、西岸にまわると、南大門の西寄りには池水面より約四メートルほどの高さにあるのが築山です。
水際からその山頂近くまで、大小各種の石を立て、岩山の姿を造り出していて、深い淵に臨む断崖の景観を思わせます。さらに築山に続く石組は、『作庭記』に書かれている「枯山水の様」の実例と考えられております。
【洲浜】
池の東南隅に築山と対照的に造られた洲浜は、砂洲と入江が柔らかい曲線を描き、美しい海岸線を表しています。他に比べて池底を特に浅くし、広々と玉石を敷きつめているので、水位の昇降に応じて現れるゆったりした姿を眺めることができます。
【出島と立石】
約三千坪の広さを持つ大泉が池は水際に海岸の風景を、また随所に山水の景観を映しています。
なかでも池の東南岸にある荒磯(ありそ)風の出島は、庭園の中で最も美しい景観の一つです。
池辺から水中へと玉石を敷きつめ、石組が突き出し、水中には岸から約十一メートルの飛島に高さ約二メートルの立石がそそり立っています。池全体の調和をひきしめて、見る人の心をとらえて離しません。
【遣水(やりみず)】
池の北側には、平安時代の遺構としては日本最大のものとされる遣水があります。
池に水を引くためと曲水の宴を開くために造られたものとされていますが『作庭記』に記述されている四神相応・吉相の順流が「遣水」の現場所であり、曲がりくねる水路の流れに、水切り、水越し、水分けなどの石組がなされ、四季折々の景色とあいまって素晴らしい景観をつくっています。
参考文献『世界遺産 毛越寺 特別史跡・特別名勝』
今なお受け継がれる伝統行事
「創建当初から伝わる『延年の舞』」
延年の舞は、仏を称え寺院をあがめ、千秋万歳を寿ぐ舞で、古くは多くの寺院で法会の後に催されていました。毛越寺には創建当初の古からの延年の舞が伝わっていて、正月二十日に常行堂で開かれる二十日夜祭の仏教儀式「常行三昧供(じょうぎょうざんまいく)」の後に奉納されます。
「延年」とは「遐齢(かれい)延年」すなわち長寿を表していて、遊宴歌舞は延年長寿につながるというところから、諸大寺の法会のあとに催される歌舞を総称して「延年」と言わています。
曲趣は様々で、風流に仕組まれたものは中国の故事などの問答方式に舞楽風の舞がついたものや、田楽躍など、当時の流行の諸芸を尽くして祝います。
毛越寺で伝わる「延年の舞」は、仏教儀式「常行三昧供」と一緒に行われてきたもので、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。現在、毛越寺には創建当時の建物は一つも残っておらず、今の常行堂も江戸時代の享保17年(1732年)に再建されたもの。仏像や仏具、書物なども後の時代のものばかりで、創建当初の宝物はほとんど現存していません。しかし、形のない「延年の舞」だけは、創建当初からの姿を今もそのままに伝え続けているのです。
参考文献『世界遺産 毛越寺 特別史跡・特別名勝』
「平安貴族の雅『曲水の宴』」
毛越寺で行われる「曲水の宴」は、平安時代の雅な文化を今に伝える重要な行事のひとつです。
もともと曲水の宴は中国から伝わった遊びで、水路の汀に座り、水路に浮かべた盃が自分の前に来るまでに和歌を詠みます。
毎年五月第四日曜日に開かれ、開始に先立って若女の舞が奉納されます。参加者はいずれも平安貴族の衣装をまとい、華やかな雅の世界が繰り広げられます。
参考文献『古寺巡礼⑥ 中尊寺・毛越寺』
※令和7年(2025年)の「曲水の宴」につきましては、曲水の宴の会場となる”遣水”中流部での発掘・修繕工事実施のため、開催中止となります。何卒ご了承くださいませ。
秘仏の神がまつられる常行堂
常行堂は、享保十七年(1732)に仙台藩主伊達家により、旧常行堂の西側に再建されたもので、五間四方の宝形造り。須弥壇中央に本尊宝冠の阿弥陀如来坐像が安置され、両側には四体の菩薩像が配されています。そして、この堂の奥には秘仏の摩多羅神(またらじん)が祀られています。
摩多羅神は、慈覚大師が中国から帰国する船の中で感得した神で、天台宗全体の守護神とされていて、常行堂の摩多羅神は室町時代の作と推定されています。奥殿の扉はふだんは固く閉ざされ、三十三年に一度だけ開帳されます。
参考文献『世界遺産 毛越寺 特別史跡・特別名勝』
前回は2000年に開帳されたとのことでしたので、次はそこから33年後・・・。ご覧になりたい方はぜひ、チェックしておいてください。
常行堂では毎年正月二十日に摩多羅神の祭礼(別名:二十日夜祭)が行われます。その際、古式の修法と法楽としての延年の舞が奉納されます。
平安の雅に触れる秋の毛越寺
春の桜に始まり、初夏の新緑、秋の紅葉、そして冬の雪景色と、四季折々に表情を変える毛越寺庭園は、訪れるたびに心を奪われる美しさです。
特に紅葉の季節には、庭園が鮮やかに彩られ、平安時代の趣が感じられるようです。池を囲む紅葉が水面に映り込むと、まるで静かな秋の絵画のようで、澄んだ空気の中風にそっと揺れる落ち葉がまた風情を添えます。
紅葉を眺めながら散策すると、平安の雅がふと身近に感じられるひとときを楽しめます。
また、秋には藤原まつりや萩まつりといった季節の行事も開催され、平安時代の儀式や舞などが行われます。これらの行事を通じて、当時の貴族たちが愛した優雅な風流を味わえるのも毛越寺ならではの魅力です。
そしてこらからの時期には雪景色の中で二十日夜祭が行われます。雪に包まれた庭園もとても幻想的な美しさを見せてくれます。
一年を通して異なる表情を見せてくれる毛越寺の庭園は、訪れるたびに新たな感動を与えてくれる、まさに時間を忘れる場所です。