【中尊寺落慶900年記念】「経蔵と金銀字経の美」開催!900年前の平泉文化に触れる特別企画展

2026年、岩手県平泉町の中尊寺は「落慶900年」という大きな節目を迎えています。
そんな記念の年にあわせて、2026年10月19日(月)から11月15日(日)まで、中尊寺の讃衡蔵で企画展「経蔵と金銀字経の美」が開催されます。
今回の企画展では、中尊寺に伝わる「紺紙金銀字交書一切経」をはじめ、経蔵に残された平安時代の彩色文様に注目。
今から約900年前、奥州藤原氏によって華やかな文化が築かれた平泉。
当時の人々が仏教に込めた祈りと、平泉文化の美しさを感じられる特別な企画展をご紹介します。
2026年は「中尊寺落慶900年」

世界遺産・中尊寺は、奥州藤原氏初代・藤原清衡によって大規模な堂塔の造営が進められました。
そして1126年、主要な伽藍が完成し、その完成を祝う「落慶供養」が行われたとされています。それから900年。
2026年は「中尊寺落慶900年」という記念すべき年にあたり、中尊寺では一年を通してさまざまな記念行事が開催されています。
さらに2026年は、「平泉の文化遺産」が世界文化遺産に登録されてから15周年。
平泉にとって、歴史と文化を改めて振り返る特別な一年となっています。
「経蔵と金銀字経の美」とは?
中尊寺落慶900年を記念して開催される企画展が、讃衡蔵宝物館企画展「経蔵と金銀字経の美」です。
開催期間は、2026年10月19日(月)から11月15日(日)まで。
今回の企画展では、中尊寺落慶にあたって施入された「紺紙金銀字一切経」の完成900年を記念し、原資料が特別に展示されます。
さらに、中尊寺の経蔵に残されている平安時代の彩色文様を復元した展示も行われます。
900年前の平泉で生み出された美しい仏教文化を、間近で感じられる貴重な機会となりそうです。
金と銀の文字で書かれた「紺紙金銀字交書一切経」
今回の企画展でぜひ注目したいのが、「紺紙金銀字交書一切経(こんしきんぎんじこうしょいっさいきょう)」です。
名前だけ聞くと少し難しく感じるかもしれませんが、その特徴はとても華やか。
深い紺色の紙に銀色の線を引き、その中に金色と銀色の文字を一行ずつ交互に使って経文を書いたものです。
この一切経は、奥州藤原氏初代・藤原清衡の発願によって1117年から書写が始まり、長い年月をかけて完成したとされています。
紙、文字、そして金と銀。経典でありながら、一つの美術作品を見ているような美しさも大きな魅力です。
当時の平泉が持っていた高い文化水準や、仏教に対する強い祈りを現代に伝える貴重な文化財です。
「経蔵」にも注目してみよう

今回の企画展のタイトルには「金銀字経」だけでなく、「経蔵」という言葉も入っています。
経蔵とは、その名の通り経典を納めるための建物です。
中尊寺の経蔵は長い歴史の中で火災の被害を受けていますが、その後再建され、現在まで伝えられています。
注目したいのが、現在の建物にも創建当時の古い部材の一部が再利用されていること。
その古材には、平安時代のものと考えられる彩色の痕跡が残されています。
今回の企画展では、その彩色文様を復元した展示も行われる予定です。
現在の経蔵を見るだけでは分からない、900年前の華やかな姿を想像しながら展示を見るのも楽しみ方のひとつです。
企画展を見た後は、ぜひ中尊寺境内にある実際の「経蔵」にも足を運んでみてください。
金色堂のすぐ近くにあり、現在の建物にも創建当時の古材が使われています。
企画展で金銀字経や彩色文様について知ってから実際の建物を見ると、
「900年前はどんな色だったんだろう?」「この場所にどのように経典が納められていたのだろう?」
と、それまでとは少し違った視点で中尊寺を見ることができるかもしれません。
展示と実際の文化財をあわせて見ることができるのも、現地を訪れるからこその楽しみです。
会場は中尊寺「讃衡蔵」

企画展の会場となる「讃衡蔵(さんこうぞう)」は、中尊寺に伝わる貴重な文化財を収蔵・展示する宝物館です。
中尊寺を訪れた際には金色堂を目指す方も多いと思いますが、讃衡蔵にも中尊寺や奥州藤原氏の歴史を知るうえで欠かせない文化財が展示されています。
金色堂を訪れる前後に立ち寄り、じっくりと平泉文化に触れてみるのがおすすめです。
約500年の時を経て平泉へ―八重樫センター長に聞く「金銀字経」の魅力

平泉世界遺産ガイダンスセンター センター長 八重樫忠郎さん
今回の展示では、約500年の時を経て平泉へ里帰りする貴重な中尊寺経が公開されます。
そもそも中尊寺経とはどのようなお経なのか。なぜ紺色の紙に金と銀の文字で書かれているのか。そして、平泉を離れたお経はどのような歴史をたどり、再びこの地へ戻ってくるのでしょうか。
展示をより深く楽しむため、平泉の歴史に詳しい平泉世界遺産ガイダンスセンター長の八重樫さんに、中尊寺経の歴史や今回の里帰り展示の貴重さ、そしてぜひ注目してほしい見どころについてお話を伺いました。
中尊寺落慶900年記念特別展示はどのようなものが展示される予定でしょうか。
八重樫さん「中尊寺経といってですね、今から900年ほど前に作られたお経が5,300巻あるんですよ。それが今、中尊寺にはだいたい30巻ちょっとぐらいしか残ってなくて、900年のうちに全国に散らばってしまったんだよね。それの『里帰り展示』なんですよ。ですから、約400〜500年ぶりに戻ってくるんじゃないかな。」
当時作られた言わばオリジナルのものが展示されるとのことですか?
八重樫さん「そうです。もともと今のお経っていうのは、だいたい白い紙に墨で書いているのが基本なんだけど、中尊寺のお経は紺の紙に金と銀で書かれるものがほとんどなんですよ。金だけのものもあるんだけどね。今回のものは、金と銀で一行ずつ交互に文字が書かれていて、これは日本では平泉の中尊寺経にしかないものと言っていいですね。今回里帰り展示されるものは、ほぼいい状態のものなので、最初の方に「扉絵」と呼ばれる絵があって、そこからお経が始まっていくんですけども、その扉に描かれている絵も素晴らしい、秀逸な絵です。」
金と銀が交互に書かれているお経についても、教えてください。
八重樫さん「そもそも、なぜ紺の紙に金と銀で書くかっていうとですね、仏の世界、仏国土は、金・瑠璃色の世界、空とかいろんなところが青色、紺色の世界で、金と銀の建物とか、すべてが金と銀で飾られていると考えられている。だから金色堂は金の建物になっているんですよ。このお経も紺の紙に金と銀で書く。つまり、お経一巻一巻がもう仏の世界を表しているということなんですよ。それが5,300巻もあったんですけども、今では数十巻しか中尊寺には残ってませんがね。さまざまなところに散らばったものを今回、伊豆からお借りして、里帰り展示をするということですから、非常に何百年ぶりかに中尊寺に戻ってくるものなのでね。ぜひ見ていただければとは思います。」
今回展示されるこの金銀字経については、かなり貴重なもので普段は中尊寺にないものが今回里帰りして展示されるということですね。もしかすると、二度と中尊寺で見ることはできない可能性も?
八重樫さん「巡り巡り現在では伊豆にあるんですけど、それが戻ってくるのは約500年ぶりの話ですから、本当にすごい年月をかけて里帰りするっていうことですよね。」
全国の様々な場所に散らばった物が、なんで伊豆にあって、それが「中尊寺のものだ」と分かったのか教えてください。
八重樫さん「特にも一番大きいのはね、今ちょうど大河ドラマでやっている『豊臣兄弟!』と同じ時代の、豊臣秀次っていう人がね。豊臣秀吉の甥っ子なんだけども、その人が「奥州仕置」といって、一戸、二戸の方に戦いに来るんですよ。その帰りに中尊寺に寄ってね、中尊寺に素晴らしい本物のお経がたくさんあるっていうことを確認していって。そして豊臣秀吉に会って、「いや、それは東北の地に置いておくのはもったいないね」と言って、持っていかせたのが一番大きいんですよ。その時に、まず大半が持っていかれてしまう。大阪に持っていこうとするんだけど、その途中で今度、秀吉も死んじゃうし、それによってたくさん大阪の方に移動していったものが散らばる大きなきっかけになって、それがあの辺一帯にばらまかれてしまったんですよね。だから今、中尊寺経のこの金と銀で書いたものは、本来5,300巻あるんですけど、所在がはっきり分かっているのは4,600巻なんですよ。だから、あと700巻ほどがまだどこにあるかが分からない。だからいまだに、「うちにありましたよ」なんていう……が出たりもするんですよ。」
そのうちの一部は、もしかするともうすでにこの世からなくなってしまっている可能性もありますし、どこかのご自宅に眠っていたりとか、ある意味ロマンがあるような話でもありますよね。この5,300巻あるとのことですが、相当なボリュームだと思うんですけど、内容的には、どういったことが書かれているものになるんでしょうか。
八重樫さん「その巻物一巻一巻でいうと5,300巻。でも、お経の種類とすればね、そんなにはないんですよ。お経の種類だと……数百種類ぐらいかなと思います。一巻しかないお経もあるし、400巻あるお経もあるんですよ。法華経って有名なお経だと八巻ですね。そうやって一つのお経で八巻とか、400巻とか、600巻っていうのもあるわけで。でも種類とすると、200〜300種類のお経。それを全部、金と銀で書いているわけです。だから、すごい。お経っていうのは数が多いんですよ。そのお経の中には、法華経っていう、みんなで平等の社会で暮らしましょうとか、お釈迦様の教えなので。あとは皆さんがご存じの『西遊記』って、孫悟空の話などもあるんですよ。だから、その仏様の教えだけじゃなくて、当時のいろんな出来事が書かれているんです。」
それを書いた方も中尊寺の?
八重樫さん「そうですね。これは結局テキストがあって、それを写していくわけですから。金と銀で。もともとは白い紙に墨で書かれていたものを写して、紺の紙に金と銀で一行ずつ書いていく。」
その内容のオリジナルみたいなものは、中国から来たものでしょうか?
八重樫さん「そうです。もともとは中国です。それを岩手県内でもいくらかテキストがあったと思うんだけども、あとは多くは京都から借りてきたり、また京都で写したりしたようです。そうやって5,300巻を金と銀で。国内ではね、天皇とか「摂関家」っていって、今でいうと総理大臣、そういう人たちでさえ成し得なかった大事業なんですよ。当時は国家元首というのは天皇なので、その天皇家でも成し得ない、金と銀で書くというのは。天皇家でなんとか成し得たのは、金だけで書くのが精いっぱいだったんだけど、平泉はそれを超えた、金と銀で書いてある。」
当時の中尊寺が、日本の中でも影響力や存在感があったっていうのは、やっぱりこういったところからも読み取ることができるということですよね。
八重樫さん「だから900年前にできたものだけど、その約500年後の豊臣秀吉の時代だね。『そんなすごいものが奥州にあっちゃいかん』って言って、取られちゃったわけですよ。でも豊臣秀吉も亡くなっちゃうので、大阪まで来てから、散らばってしまうことになっちゃった。そのうちの一巻が今回戻ってくるということです。」
本当にお話を聞くと大変ロマンがあって、日本史がいろんなところでつながっていくんだなというのが随所で感じられます。中尊寺だと、それこそ海外のお客さんも含めていろんな方々がこの展示に行かれると思うんですけど、もちろんこの展示を「ぜひ見たい」という歴史ファンの方もいれば、普段は歴史にそんなに詳しくない方もいっぱいいらっしゃると思うんです。今回、大変貴重なものが展示されるということで、「こういったところを見てほしい」とか、「ここにぜひ注目してほしい」というところがあれば教えてください。
八重樫さん「今回のね、里帰り展示するものはね、先ほど言ったように一番最初に絵があるんですよ。お経の中身を、ある程度示すような絵が描かれていて。その絵がね、やっぱり京都で作られれば、ほとんどが仏様の絵だけなんですよ。ところが、平泉で描かれたその最初の絵はね、仏様だけじゃなくて、いろんな日常的なことが描かれている。だから絵としてもね、非常に自由闊達な絵になっていると評価されてますから。その最初の絵とか、たぶん今回展示では出ると思う。その「扉絵」と呼ばれる一番最初の絵には、ぜひ注目してもらえればなと思います。」
最後に、ブログをご覧の方にメッセージをお願いします。
八重樫さん「中尊寺経は、その軸、お経を巻く軸、あとお経を巻く紐もね、これもちゃんと「組紐」っていわれる、織った紐なんですよ。なので、そういう紐とか軸にもね、細かな装飾がされているので、そういうところも見ていただければなと思います。」
「経蔵と金銀字経の美」開催概要
企画展名
中尊寺落慶900年記念
讃衡蔵宝物館企画展「経蔵と金銀字経の美」
開催期間
2026年10月19日(月)~11月15日(日)
会場
中尊寺 讃衡蔵
所在地
岩手県西磐井郡平泉町平泉字衣関202
※拝観時間や料金などについては、参拝前に中尊寺公式ホームページで最新情報をご確認ください。
10年ぶりの「秘仏御開帳」も開催中!

2026年の中尊寺を訪れるなら、もう一つ注目したいのが「秘仏御開帳」です。
2026年7月17日(金)から11月15日(日)まで、中尊寺落慶900年を記念して、重要文化財「一字金輪佛頂尊坐像」が御開帳されています。
通常は公開されていない秘仏で、今回の御開帳は10年ぶり。「経蔵と金銀字経の美」の開催期間中も御開帳されているため、あわせて拝観できる貴重な機会です。
900年前の平泉の「美」に触れてみよう
金色堂の黄金に代表されるように、平安時代の平泉では非常に華やかな文化が築かれました。
しかし、その美しさは金色堂だけではありません。深い紺色の紙に金と銀の文字で書かれた経典。経蔵を彩っていた文様。そして、それらに込められた人々の祈り。
「経蔵と金銀字経の美」は、そうした900年前の平泉文化を改めて知ることができる企画展です。
2026年は、中尊寺落慶900年、そして平泉の世界文化遺産登録15周年という特別な一年。
秋の紅葉とともに中尊寺を巡りながら、今から約900年前に花開いた平泉の文化と美しさに触れてみてはいかがでしょうか。


